【SM・ドミサブ】SMで大切にされる考え方:SSC・RACK

SMのことを調べていると、「SSC」や「RACK」というアルファベットに出会うことがありますよね。なんだか難しそうですが、どちらも「SMを、傷つけ合うものにしないための考え方」なんです。
このページでは、ふたつの考え方の意味と違い、そして話し合いにどう使えばいいかをまとめました。
SSC:安全・正気・合意
SSCは、英語の「Safe, Sane, Consensual」の頭文字です。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| Safe(安全) | からだと心が、取り返しのつかない形で傷つかないこと |
| Sane(正気) | 判断できる状態であること。お酒や薬で判断が鈍っていない、怒りにまかせていない |
| Consensual(合意) | ふたりが、何をするかを知ったうえで同意していること |
SMに興味を持った人が最初に知る考え方として、広く使われています。分かりやすいのがいいところです。
RACK:危険を知ったうえでの合意
RACKは、「Risk-Aware Consensual Kink」の頭文字です。日本語にすると、「危険を知ったうえで合意した、性の好み」くらいの意味になります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| Risk-Aware(危険を知る) | その行為に、どんな危険があるかを知っている |
| Consensual(合意) | 危険を知ったうえで、ふたりが同意している |
| Kink(性の好み) | 一般的とされる性行為とは違う、好みや嗜好 |
RACKが生まれた背景には、「完全に安全なSMなんて無い」という考え方があります。SSCの「安全」という言葉では、危険が隠れてしまう。だから、危険があることを認めたうえで、それを知って合意しよう、という考え方です。
ふたつの違い
| SSC | RACK | |
|---|---|---|
| 中心にあるもの | 安全であること | 危険を知っていること |
| 分かりやすさ | 入門向けで分かりやすい | 少し考え方が深い |
| 気をつけたいところ | 「安全」と言えば何でもいいわけではない | 「危険を知っている」が、危険なことの言い訳にならないように |
どちらが正しい、ということではありません。どちらも、合意を真ん中に置いているところは同じです。
どちらの考え方でも外せないこと
| 外せないこと | 理由 |
|---|---|
| 本当の合意 | 断れない雰囲気・お金・立場の差の中での「いいよ」は、合意とは言えない |
| いつでも撤回できること | 一度「いい」と言っても、途中でやめていい |
| 判断できる状態 | お酒や薬で酔っている・眠っている相手とは、しない |
| 止める合図 | セーフワードや、声が出せないときの合図 |
| 命にかかわる行為はしない | 首・呼吸にかかわる行為に、安全なやり方は無い |
「危険を知ったうえで合意した」と言っても、命にかかわる行為が安全になるわけではありません。RACKを、危ないことをしていい理由にしないでください。
合意をつくるときに確かめること
| 確かめること | 例 |
|---|---|
| 何をするか | 具体的な行為の名前で |
| どこまでか | 強さ・時間・からだの場所 |
| 何をしないか | NG(リミット) |
| どう止めるか | セーフワード・合図 |
| 終わったあとどうするか | アフターケア |
| 体調・気分 | その日の調子 |
具体的に話すのは照れくさいかもしれませんが、ここを省くと、ふたりの思っていることがずれてしまいます。話し合いのしかたは「『したい・したくない・迷う』リストの作り方」にまとめています。
合意と法律
ふたりが合意していても、すべてが許されるわけではありません。大きなけがをさせると、法律の問題になることがあります。また、同意していない相手への性的な行為は、性犯罪になります。2023年の刑法の改正で、同意のない性行為の扱いがはっきりしました。くわしくは「SMと法律:同意があっても問題になり得ること」へ。
話し合いがうまくいかないとき
| うまくいかない理由 | 工夫 |
|---|---|
| 照れくさくて言葉にできない | 紙やスマホのメモに書いて見せ合う |
| 相手の希望を断りにくい | 「したくない」に理由はいらない、と先に決める |
| 話すと盛り下がる | プレイとは別の日・別の場所で話す |
| 相手が話し合いを面倒がる | 合意を軽く見ている相手とは、SMをしない |
| 何を決めればいいか分からない | 上の「合意をつくるときに確かめること」の表を順に |
合意が「本物」かを確かめる
「いいよ」と言われても、本当に同意しているとは限りません。
| 本物の合意に近い | 合意とは言いにくい |
|---|---|
| 自分から「試してみたい」と言っている | 何度も頼まれて、仕方なく「いいよ」 |
| 断っても関係が悪くならないと思える | 断ると不機嫌になる・別れを持ち出される |
| しらふで、落ち着いて話している | 酔っている・眠い・興奮している |
| 何をするかを具体的に知っている | 「任せて」と言われて中身を知らない |
| 立場が対等 | 上司と部下・お金の貸し借りがある |
右の列に近いと感じたら、その日はしない。それが、SSCでもRACKでも共通の答えです。
考え方を、日々のプレイに生かす
| 考え方 | プレイの前 | プレイの最中 | プレイのあと |
|---|---|---|---|
| 安全 | 道具の点検・救急の備え | 様子を見る | けがを確かめる |
| 判断できる状態 | お酒・体調を確かめる | 異変があれば止める | 疲れをとる |
| 合意 | すること・しないことを決める | 合図を守る | 気持ちを聞く |
| 危険を知る | 行為の危険を調べる | 決めた範囲を超えない | 次の話し合いに生かす |
言葉として覚えるより、毎回の流れの中に組みこむほうが、自然に続けられます。
よくある疑問
SSCとRACK、どちらを使えばいい?
言葉はどちらでもかまいません。大事なのは、ふたりで「何をして、何をしないか」「どう止めるか」を確かめ合うことです。
相手が「RACKだから大丈夫」と言って危ないことをしたがる
危険を知っていることと、危険をおかしていいことは違います。あなたが望まないなら、断ってください。
合意したのに、途中でいやになった
止めていいんです。合意は、いつでも取り消せます。
合意を紙に書いておく必要はある?
必ずではありません。ただ、書き出すと、ふたりの思っていることのずれに気づきやすくなります。「したい・したくない・迷う」リストのように、メモの形で十分です。
長く付き合っている相手なら、毎回確かめなくていい?
慣れた相手でも、その日の体調や気分は毎回違います。「今日はどう?」の一言だけでも、確かめる習慣を続けてください。
お店のスタッフとのプレイでも、合意は必要?
必要です。お店でも、何をして、何をしないかを始める前に確かめ、止める合図を決めます。お金を払っているからといって、何でもしていいわけではありません。
相談できるところ
| 悩み | 相談先 |
|---|---|
| 同意のない行為をされた | ワンストップ支援センター(#8891)・警察(#9110) |
| けが・体調の異変 | 医療機関・救急(119) |
| ふたりの話し合いがこじれる | カウンセリング |
アルファベットの言葉は、話し合いの入口です。言葉を知ったら、次はふたりの言葉で確かめ合ってください。
- MSDマニュアル家庭版「性的マゾヒズム障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-心の健康問題/パラフィリアとパラフィリア症/性的マゾヒズム障害
- 法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」 https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html