【性教育の基本】妊娠して迷っているとき、どう考える?

妊娠が分かった日から、頭の中で同じ問いがぐるぐる回る。産みたい気持ちもある。でも、お金も、仕事も、相手との関係も、どう考えても無理な気がする。誰かに「どうしたらいい?」と聞きたいけれど、聞ける相手がいない。そんな状態のまま、何日も過ぎてしまう人がいます。
迷うのは、それだけ真剣に考えている証拠です。すぐに答えが出ないことを、責めなくていいんです。このページは、どちらかに背中を押すためのものではありません。迷っている頭の中を、少し整理するためのページです。
選べる道は3つ
思いがけない妊娠のとき、選べる道は大きく分けて3つあります。
| 道 | どういうこと |
|---|---|
| 産んで、自分で育てる | 出産して、自分(たち)で子どもを育てる |
| 産んで、別の家庭に託す | 出産したうえで、特別養子縁組などで、育ててくれる家庭に託す |
| 中絶する | 妊娠22週未満のうちに、医療機関で人工妊娠中絶を受ける |
2つめの道は、あまり知られていないかもしれません。特別養子縁組は、子どもと生みの親との法律上の親子関係を終わらせ、育ての親との間に実の親子と同じ関係をつくる制度です。家庭裁判所が、子どもの利益のために特に必要と認めたときに成立します。「産みたいけれど育てられない」と感じている人にとって、知っておく価値のある選択肢です。
期限を先に確かめる
どの道を選ぶにしても、最初にしておきたいのは産婦人科の受診です。いまが妊娠何週なのかで、残りの時間が決まるからです。
| 知っておきたい期限 | 内容 |
|---|---|
| 妊娠9週0日まで | 飲む中絶薬(経口中絶薬)を使える時期 |
| 妊娠12週未満 | 初期中絶。選べる方法が多く、からだの負担も比較的小さいと言われる |
| 妊娠22週未満 | 中絶を受けられる期限 |
「まだ決めていないのに受診するのは気が引ける」と思うかもしれません。でも、受診は決めるためのものではなく、決めるための材料を集めるためのものです。週数が分かると、あと何週間考えられるのかが見えてきます。
頭の中を整理するために
迷っているとき、気持ちと事情がごちゃごちゃに混ざっていることが多いです。紙やスマホのメモに、次のことを書き出してみてください。
| 書き出すこと | 例 |
|---|---|
| いまの気持ち | 産みたい、こわい、相手のことが分からない、何も感じられない |
| からだのこと | 体調、持病、これまでの妊娠や出産 |
| お金と暮らし | 収入、住まい、仕事や学びを続けられるか |
| 相手のこと | 伝えたか、どう反応したか、頼れるか |
| 頼れる人 | 家族、友だち、職場、地域の支援 |
書いてみると、「お金の問題は支援で何とかなるかもしれない」「本当に引っかかっているのは相手との関係だった」など、何がいちばん重いのかが見えてくることがあります。分からないところが残ってもかまいません。分からない部分こそ、相談窓口で一緒に考えてもらえます。
気持ちが揺れるのは自然なこと
朝は産もうと思っていたのに、夜になると無理だと思う。そうやって揺れ続けるのは、珍しいことではありません。どちらの気持ちも本当なんです。
周りの人の意見が強すぎて、自分の気持ちが分からなくなることもあります。「産むべき」「おろすべき」と言われても、最終的に決めるのは妊娠している本人です。誰かの意見に流されたと感じる決め方は、あとで苦しさにつながりやすいと言われています。時間の許す範囲で、自分の声を聞いてください。
お金の不安が大きいとき
迷う理由のなかで、いちばん多いのがお金のことかもしれません。産むにしても、中絶するにしても、お金がかかるのは事実です。
ただ、「お金がないから選べない」と決めてしまう前に、相談窓口で一度話してみてください。妊娠や出産にかかわる支援は、国や自治体にいくつかあり、住んでいる地域によって使えるものが違います。自分で全部を調べるのは大変なので、窓口の人に「お金のことが不安」と伝えて、使えそうなものを一緒に探してもらうのが近道です。
中絶の費用は、ほとんどの場合、健康保険が使えず自己負担になります。週数が進むほど高くなるので、その意味でも受診は早いほうがいいんです。
あとで自分を責めすぎないために
どの道を選んでも、あとから「あれでよかったのかな」と思う日が来ることがあります。それは、選んだ道が間違っていたという意味ではありません。大事なことを真剣に決めた人ほど、振り返る時間があるものです。
そのときのために、いま考えたことをメモに残しておくのもひとつの方法です。どんな事情があって、何を大事にして決めたのか。あとで読み返したとき、当時の自分の精いっぱいが分かると、自分を責めすぎずにすみます。
相手と話すとき
相手に伝えるかどうか、どう話すか。これも大きな悩みです。
| 話すときのヒント | 理由 |
|---|---|
| 結論より先に、事実と気持ちを伝える | 相手にも考える時間が必要 |
| 費用・受診・これからのことを具体的に話す | 気持ちの話だけだと、すれ違いやすい |
| 1回で決めようとしない | 何回かに分けて話すほうが、落ち着いて考えられる |
相手が責める、脅す、連絡を絶つ、といった反応をした場合は、無理に話し合いを続けなくていいんです。相談窓口に話して、自分の安全と選択を守ることを優先してください。
家族に話せないとき
家族に知られたくない、知られたら困る。そう感じている人も多いと思います。20歳以上なら、受診も、相談窓口の利用も、自分の判断でできます。
ただ、出産を選ぶ場合や、費用の面で支えが必要な場合は、誰か1人でも味方がいると、ずいぶん楽になります。家族でなくても、信頼できる友だちや、相談窓口の担当者がその1人になってくれることもあります。
相談できるところ
| 窓口 | どんなところ |
|---|---|
| 妊娠相談窓口サイト(こども家庭庁) | 思いがけない妊娠について、匿名・無料で相談できる全国の窓口を、相談の方法や時間で探せる |
| 女性相談支援センター(#8778) | 困りごとを抱える女性の相談先。都道府県の窓口につながる |
| 性と健康の相談センター | 自治体が設けている、妊娠やからだの相談窓口 |
| 産婦人科 | 妊娠の確認、週数、からだのこと |
相談窓口では、産む場合に使える支援、託す場合の流れ、中絶する場合の医療機関の探し方まで、どの道についても話を聞いてもらえます。「どうしたらいいか分からない」の一言から始めてかまいません。
パートナーや身近な人へ
打ち明けられたとき、あなたの意見を伝えるのは悪いことではありません。でも、決めるのは本人です。「どうしたいか、一緒に考えよう」「どっちを選んでも味方でいる」と言える人がそばにいるだけで、本人は少し息ができるようになります。
受診に付き添う、費用を一緒に考える、相談窓口を一緒に調べる。そうした具体的な支えを申し出てください。
よくある疑問
決めるまで、どのくらい時間がある?
週数によって違います。受診して週数が分かれば、中絶を選ぶ場合の期限(22週未満)や、飲む中絶薬を使える時期(9週0日まで)までの残り時間が分かります。
産んだあとに育てられないと思ったら?
出産の前でも後でも、相談窓口や自治体の窓口で、託す方法を含めて相談できます。1人で抱えて、誰にも言わずに出産する形にならないよう、早めに相談してください。
相手が「産んで」「おろして」と言ってくる
相手の気持ちを聞くのは大事なことです。でも、妊娠しているのはあなたのからだです。相手の希望と自分の気持ちが違うときは、その違いも含めて相談窓口で話してみてください。押し切られて決めるのではなく、自分で選んだと思える形にしていいんです。
最後に
思いがけない妊娠で迷うのは、自然なことです。選べる道は3つあって、どの道にも相談できる窓口があります。期限だけは待ってくれないので、受診だけは先に。そのうえで、自分の気持ちを置き去りにしない選び方をしてください。
- こども家庭庁 はじめよう プレコンセプションケア「『妊娠したかも…』予期せぬ妊娠への向き合い方と相談窓口」 https://precon.cfa.go.jp/dictionary/unintended-pregnancy/
- こども家庭庁「妊娠相談窓口サイト」 https://ninshin-soudan.go.jp/
- 法務省「養子縁組について知ろう」 https://www.moj.go.jp/MINJI/kazoku/youshi.html
- 厚生労働省「女性相談支援センター全国共通短縮ダイヤル(#8778)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40452.html