【嗜好の多様性】S気質は変?

性行為のとき、自分が主導したい。相手が照れたり、委ねてきたりする様子を見ると、気持ちが高まる。少し意地悪なことを言ってみたくなる。そんな自分に気づいて、「もしかして自分はひどい人間なのかな」と、戸惑っている人もいると思います。
S気質という言葉には、どこか「相手をいじめる」「乱暴」というイメージがつきまといますよね。だから、自分にそういう気持ちがあると気づくと、罪悪感を抱いたり、人に言えなくなったりすることがあるんです。
でも、S気質と呼ばれる気持ちの多くは、相手を傷つけたいという気持ちとは違います。このページでは、S気質と呼ばれるものの例と、相手を大切にしながら向き合う方法をまとめました。
S気質と呼ばれるものの例
| 例 | 中身 |
|---|---|
| リードしたい | 流れや雰囲気を自分で決めたい |
| 反応 | 相手が照れたり、ゆだねたりする様子にどきっとする |
| 言葉 | 少し意地悪な言い方をしてみたい |
| ふだんとの差 | 普段は穏やかなのに、その時だけ主導したくなる |
| 頼られたい | 相手に委ねられることがうれしい |
ふだんは穏やかで、人に気をつかうタイプの人が、性の場面ではリードしたくなる、ということもよくあります。
「相手を傷つけたい」とは違う
SMのS側に惹かれる人の多くは、相手が嫌がることをしたいわけではありません。相手が受け入れてくれる範囲で、ゆだねられる感覚や反応を楽しんでいます。主導する側は、相手の様子を見て加減し、合図があれば止める役割も一緒に引き受けます。
| S気質としての楽しみ | 相手を傷つけること |
|---|---|
| 相手が受け入れた範囲で楽しむ | 相手が嫌がることをする |
| 相手の反応を見て加減する | 相手の様子を気にしない |
| 合図があればすぐ止める | 止めてと言われても続ける |
| 終わったあとに相手をいたわる | 終わったら放っておく |
左の列の楽しみ方なら、それは相手を大切にしながら嗜好を楽しんでいる、ということなんです。
主導する側の責任
S気質の人が主導する側になるとき、そこには責任がともないます。相手の安全と気持ちを見守ること。相手のNGを守ること。合図があれば、すぐに止めること。リードする楽しみと、相手を守る責任は、いつもセットなんです。
安全のために
- 相手のNGを先に聞く。「嫌よ嫌よも好きのうち」と決めつけない
- セーフワードを決め、出たらすぐ止める
- 顔色や反応がいつもと違うと思ったら、いったん止めて聞く
- 終わったあとに、よかったこと・嫌だったことを話す
- お酒に酔っているときはしない
「嫌よ嫌よも好きのうち」は危ない
「嫌と言っていても、本当は好きなんだろう」と決めつけるのは、とても危険です。本当に嫌がっているのに続けてしまえば、それは同意のない行為になります。だからこそ、セーフワードを決めておくんです。セーフワード以外の「嫌」も、迷ったら止めて確かめる。それが、相手を大切にする主導の仕方です。
パートナーへの伝え方
S気質のことを、パートナーにどう伝えるか迷う人もいますよね。「こわい人だと思われたらどうしよう」と心配になるかもしれません。
| 伝え方 | 例 |
|---|---|
| 気持ちとして | 「実は、リードするのが好きなんだ」 |
| 安心を添えて | 「嫌なことは絶対にしないから、NGは教えてほしい」 |
| 相手の気持ちを聞く | 「どう思う?嫌だったら全然いいよ」 |
相手が乗り気でないなら、無理に進めないでください。相手の気持ちを尊重することも、主導する側の大切な役割です。
自分の気持ちが怖くなったとき
同意していない相手に向けた想像が頭から離れない、気持ちを抑えられず苦しい、という場合は、ひとりで抱えずに医療機関や相談先を頼ってください。嗜好があること自体を責める必要はありません。
医学の解説では、同意していない相手が対象になっている、あるいは本人が強く苦しんでいて生活に支障が出ている、といった状態が続く場合に、医療の対象になると説明されています。嗜好そのものではなく、それによって苦しんでいるかどうか、誰かを傷つけているかどうかが、ひとつの目安になるんです。
よくある疑問
女性でS気質は変?
変ではありません。女性にもS気質の人はたくさんいます。
ふだんは穏やかなのに、そのときだけSになる
ふだんとの差があるのは、珍しいことではありません。性の場面での役割と、ふだんの自分は、別のものとして楽しめばいいんです。
相手がM気質でないとき
相手の嗜好を尊重してください。無理に役割を押しつけると、相手を傷つけてしまいます。2人が心地いい形を一緒に探していけばいいんです。
S気質の人が身につけておきたいこと
主導する側になるなら、相手を守るための知識も持っておきたいところです。
| 身につけたいこと | 理由 |
|---|---|
| 相手の様子を読む | 言葉にならない「嫌」に気づける |
| 加減を知る | 少しずつ。強くしすぎない |
| すぐ止める習慣 | 迷ったら止めて確かめる |
| アフターケア | 終わったあとに相手をいたわる |
| 危険な行為をしない | 命やからだに関わることは、知識があってもしない |
上手な主導は、強さではなく、相手への気配りから生まれます。相手が安心して委ねられるからこそ、2人の時間は深いものになるんです。
S気質の人が感じやすい悩み
| 悩み | 考え方 |
|---|---|
| 相手を傷つけないか心配 | その心配があること自体が、相手を大切にしている証拠 |
| リードしたいのに、相手が乗り気でない | 無理に役割を押しつけず、話し合う |
| 自分の気持ちが強すぎるのでは | 相手の同意と安全を守れているかで考える |
| ふだんの自分とのギャップに戸惑う | 性の場面での自分も、自分の一部 |
S気質の人の多くは、相手を大切に思うからこそ悩んでいます。その気持ちは、主導する側としての大切な資質です。
リードの仕方を相手と一緒に決める
主導する側だからといって、すべてをひとりで決める必要はありません。
| 一緒に決めること | 例 |
|---|---|
| どこまでリードするか | 流れだけか、言葉もか |
| どんな言葉がうれしいか | 相手が心地いいと感じる言葉 |
| 嫌な言葉 | 本当に傷つく言葉は使わない |
| セーフワード | 止める合図 |
相手の希望を聞いて、その範囲の中でリードする。それが、相手が安心して委ねられるリードです。
終わったあとのいたわり
主導する側は、終わったあとのアフターケアも大切な役割です。
- 「大丈夫だった?」と声をかける
- 抱きしめる、飲み物を渡すなど、からだをいたわる
- よかったこと、嫌だったことを聞く
強い言葉ややりとりのあとほど、やさしいケアが相手の安心につながります。
相手を大切にするSであること
S気質の楽しみは、相手を大切にする責任とセットです。その責任を引き受けられるからこそ、相手は安心して委ねてくれるんです。
「本当の怒り」を持ち込まない
けんかをしたあとや、イライラしているときに、その感情を嗜好のやりとりに持ち込むのは危険です。役割としての強い言葉と、本当の怒りから出る言葉は、まったく違うものです。気持ちが荒れているときは、その日はやめておく。それが、相手を守り、2人の信頼を守ることにつながります。
自分の気持ちと向き合う時間を
S気質の自分とどう付き合うか、ひとりで考える時間を持つのも大切です。何に惹かれ、どこまでを大切にしたいのかが見えてきます。
相手を大切にする気持ちを、いつも真ん中に。
まとめ
S気質は、変ではありません。リードしたい、相手の反応を見たいという気持ちは、健全な関係の中でもよくみられるものです。ただ、主導する側には、相手の同意と安全を守る責任があります。NGを聞く、セーフワードを決める、迷ったら止めて確かめる、終わったあとにいたわる。相手を大切にしながら、嗜好と向き合ってください。
- MSDマニュアル家庭版「性的サディズム障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-心の健康問題/パラフィリアとパラフィリア症/性的サディズム障害